フィリピンへの移住、長期滞在、不動産投資を検討している日本人にとって、現地銀行口座の開設は重要なステップです。しかし、「どうやって口座を開設すればいいのか」「必要書類は何か」「日本から開設できるのか」など、疑問や不安を抱える方も多いでしょう。
本記事では、2025年最新の情報をもとに、フィリピンで銀行口座を開設する方法を徹底解説します。日本人が口座開設できる条件、必要書類、おすすめの銀行、日本国内での開設方法、注意点まで、実用的な情報を網羅的にお届けします。
フィリピンでの口座開設は以前と比べてハードルが上がっていますが、正しい知識と準備があればスムーズに手続きを進めることができます。
目次
フィリピンで銀行口座を開設するメリット
1. 現地通貨の便利な管理
フィリピンに銀行口座があれば、ATMで24時間いつでも現地通貨(ペソ)を引き出すことができます。
手数料比較
| 方法 | 手数料 |
|---|
| クレジットカード現金引き出し | 1回1,000円以上 |
| 現地銀行口座(同一銀行ATM) | 無料 |
| 現地銀行口座(他行ATM) | 10~15ペソ(約26~39円) |
2. 家賃収入・給与の受け取り
不動産所有者は家賃収入の受取口座として、就労者は給与振込先として銀行口座が必要です。
3. 資産運用の選択肢拡大
金利比較(2025年時点)
| 国/銀行 | 普通預金 | 定期預金 |
|---|
| 日本 | 0.001%~0.02% | 0.01%~0.3% |
| フィリピン(一般銀行) | 0.2%前後 | 1.0%~3.0% |
| フィリピン(地方銀行) | – | 5.0%~8.0% |
4. リタイアメントビザ(SRRV)取得
預託金要件
| 年齢・条件 | 預託金額 |
|---|
| 50歳以上 | 20,000米ドル |
| 50歳以上年金受給者 | 10,000米ドル |
| 3名以上家族申請 | +15,000米ドル/人 |
口座開設が可能な条件
観光ビザでは原則開設不可
重要な変更点
マネーロンダリング対策強化により、観光ビザでの口座開設は原則不可能になっています。ただし、支店や担当者によって対応が異なるケースもあります。
口座開設可能な条件
長期滞在ビザ保持者
| ビザ種類 | 説明 | 開設可否 |
|---|
| 9Gビザ(就労) | 現地就労者 | ◎ |
| SRRV(退職者) | 35歳以上 | ◎ |
| SIRV(投資家) | 投資家向け | ◎ |
| 13Aビザ(結婚) | 配偶者ビザ | ◎ |
| 学生ビザ | 学生 | △ |
フィリピン現地での開設手順
ステップ1:銀行・支店を選ぶ
選定基準
- アクセスの良さ(自宅・職場近く)
- ATM設置数の多さ
- ジャパンデスク(日本語対応)
- 最低預金額・維持費
ステップ2:必要書類を準備
基本書類
| 種類 | 詳細 |
|---|
| パスポート | 有効期限内の原本 |
| ACR-Iカード | 外国人登録証 |
| ビザ証明書 | 9G、SRRV等 |
| 初回預金 | 現金(ペソ/ドル/円) |
初回預金額の目安
| 口座種類 | 通過 | 金額 |
|---|
| 普通預金(通帳あり) | ペソ | 10,000ペソ(約26,000円) |
| 普通預金(通帳なし) | ペソ | 2,000ペソ(約5,200円) |
| 米ドル口座 | USD | 500ドル(約73,000円) |
| 円口座 | JPY | 50,000円 |
ステップ3~6:来店・手続き・受け取り
手続きの流れ
- 発券機で受付番号取得
- 窓口で申込書記入
- 書類提出・初回預金
- 英語署名登録(重要)
- 通帳・カード受け取り
受け取り時期
- 通帳:即日
- ATMカード:即日~10営業日
- デビットカード:後日郵送
日本国内で開設する方法
PNB(Philippine National Bank)
日本支店
- 東京支店:東京都港区三田
- 名古屋出張所:愛知県名古屋市
開設条件(日本人)
- 具体的な送金目的が必要(不動産購入、SRRV預託金等)
- 事前審査が必須(3営業日以上)
- 初回預金:20万円以上
必要書類
- パスポート
- マイナンバーカード
- 写真2枚(30mm×24mm)
- 目的を証明する書類(不動産売買契約書等)
- 郵送代510円
手続きの流れ
- 必要書類をメール送付(事前審査)
- 審査通過後、支店来店予約
- 来店して手続き
- 口座開設完了
BDO Unibank(日本支店経由)
BDOも日本に出張所がありますが、フィリピンに1ヶ月以上滞在する予定を証明する必要があります。
オンライン口座開設サービス
一部の金融サービス会社がオンラインでの口座開設をサポートしています。必要書類はパスポートと運転免許証(またはマイナンバーカード)で、オンライン面談により手続きが可能です。
日本人におすすめの銀行3選
1. BDO Unibank(バンコ・デ・オロ)
基本情報
- 設立:1967年
- 規模:フィリピン最大手
- 国内支店数:1,128以上
- ATM設置数:3,600台以上
- 海外拠点:26ヶ所
特徴
- SMグループ傘下の安定経営
- 最大規模のジャパンデスク(日本人約30名、日本語対応10名以上)
- モール内支店多数(19時まで営業、土日も利用可能)
- 三菱UFJ銀行と提携
最低預金額
- 普通預金:5,000ペソ(約13,000円)
- 最低残高割れ時のペナルティ:300ペソ/月
こんな方におすすめ
- 日本語サポートを重視する方
- 全国各地を移動する可能性がある方
- モールで買い物ついでに銀行手続きをしたい方
2. Metrobank(メトロポリタン銀行)
基本情報
- 設立:1962年
- 規模:フィリピン第2位
- 国内支店数:953以上
- ATM設置数:2,300台以上
特徴
- 三井住友銀行・ゆうちょ銀行と提携
- ネットバンクで24時間送金可能
- ビジネス向けサービス充実
- 香港・ヨーロッパにも支店
最低預金額
- 普通預金:3,000~5,000ペソ(約7,800~13,000円)
こんな方におすすめ
- 日本からの送金を頻繁に行う方
- 法人口座開設を検討している方
- 外貨預金・国際送金を重視する方
3. Philippine National Bank(PNB)
基本情報
- 設立:1916年
- 性格:元国営銀行(2007年完全民営化)
- 支店数:600以上(国内外)
- 日本支店:東京・名古屋
特徴
- 日本国内で口座開設可能
- 国庫としての役割(倒産リスク低)
- フィリピン預金保険機構(PDIC)により50万ペソまで保険保証
- 保守的で安定した運営
最低預金額
こんな方におすすめ
- 日本国内で事前に口座開設したい方
- リスクを避けた安定運用を求める方
- SRRV取得を検討している方
口座開設時の重要な注意点
1. 最低維持残高とペナルティ
フィリピンの銀行口座には「最低維持残高」が設定されており、1日でも下回るとペナルティが発生します。
ペナルティの仕組み
| 項目 | 詳細 |
|---|
| 最低維持残高 | 2,000~5,000ペソ(銀行により異なる) |
| ペナルティ金額 | 300~400ペソ/月 |
| 引き落とし方法 | 口座から自動引き落とし |
対策
- 常に最低残高+αを維持する
- 定期的に残高を確認する
- モバイルアプリで通知設定する
2. 口座凍結リスク
凍結条件
2年間入出金などの取引がない場合、口座が休眠状態(凍結)になります。
凍結後の問題
- 口座が事実上使用不可
- 毎月管理手数料が引き落とされ続ける
- 再開手続きが煩雑(開設支店での手続き必須)
対策
- 定期的に送金または引き出しを行う
- 年に数回は口座を動かす
- 長期帰国前に定期預金に切り替える
3. 口座番号の違い
重要な違い
日本では通帳番号=ATMカード番号=口座番号ですが、フィリピンでは異なります。
| 番号の種類 | 用途 |
|---|
| 通帳番号 | 口座番号(送金時に使用) |
| ATMカード番号 | ATM利用時のみ |
注意点
送金を受ける際は「通帳番号」を伝える必要があります。ATMカードの番号では送金できません。
4. 英語署名の登録
パスポートの署名が日本語でも、銀行口座では英語署名を登録する必要があります。口座開設後はこの英語署名を一貫して使用します。
5. 手数料について
主な手数料
| 項目 | 金額 |
|---|
| 口座維持手数料 | 最低残高割れ時300~400ペソ/月 |
| ATM引き出し(他行) | 10~15ペソ/回 |
| 国際送金手数料 | 送金額の1~3% |
| 通帳再発行 | 50~200ペソ |
| カード再発行 | 100~300ペソ |
6. 支店選びの重要性
開設した支店以外で手続きを行うと手数料が発生する場合があります。生活圏内の利用しやすい支店で開設しましょう。
口座開設後の管理のコツ
モバイルバンキングの活用
主な機能
- 残高照会・取引履歴確認
- 口座間送金
- 公共料金支払い
- QRコード決済
- カード管理
定期的な口座メンテナンス
推奨アクション
- 月1回の残高確認
- 年2回以上の取引実施
- 連絡先情報の更新
- 定期的なパスワード変更
帰国時の対応
短期帰国(数ヶ月)
- 最低残高以上を口座に維持
- 定期預金への一部移動を検討
- オンラインバンキングで管理
長期帰国・永久帰国
- 口座解約を推奨
- 海外送金で日本の口座へ資金移動
- 現金持ち出しは1万米ドル以下に制限
よくある質問(FAQ)
- 観光ビザで口座開設できますか?
-
原則としてできません。マネーロンダリング対策により、長期滞在ビザが必要です。
- 英語が話せなくても大丈夫ですか?
-
ジャパンデスクがある銀行(BDO、Metrobank)なら日本語でサポートを受けられます。
- 口座開設にどのくらい時間がかかりますか?
-
窓口での手続きは1~2時間程度。通帳は即日、カードは後日受け取りです。
- 日本から送金できますか?
-
可能です。海外送金サービス(Wise、SBIレミット、BDOレミット等)を利用できます。
- 複数の銀行で口座開設できますか?
-
可能です。用途に応じて複数行を使い分けることもできます。
- 口座を解約したい場合は?
-
口座開設した支店に出向き、解約手続きを行います。残高をゼロにして解約します。
- オンラインバンキングは使えますか?
-
ほとんどの大手銀行がモバイルアプリやウェブバンキングを提供しています。
- 税金はどうなりますか?
-
口座の利子所得に対してフィリピンで源泉徴収(10%)されます。日本居住者は確定申告で外国税額控除を申請できます。
まとめ
フィリピンでの銀行口座開設は、以前と比べてハードルが上がっていますが、正しい手順と準備で確実に開設できます。
開設成功のポイント
- 適切なビザの取得:長期滞在ビザ(9G、SRRV等)が必須
- 必要書類の完璧な準備:パスポート、ACR-I、初回預金
- 銀行選び:日本語サポート、ATM数、手数料を比較
- 英語署名の登録:口座開設時から一貫した署名を使用
- 口座管理の徹底:最低残高維持、定期的な取引実施
日本人にとってのメリット
- ATM手数料の削減
- 家賃収入・給与受取の利便性
- 資産運用の選択肢拡大
- SRRV取得の条件クリア
- フィリピン生活の質向上
注意すべきリスク
- 最低残高割れによるペナルティ
- 2年間取引なしでの口座凍結
- 為替変動リスク
- 支店による対応の違い
フィリピンでの銀行口座は、現地生活を円滑にするための重要なツールです。本記事の情報を参考に、自分に合った銀行を選び、確実に口座開設を進めましょう。
不明な点があれば、各銀行のジャパンデスクや専門のサポート会社に相談することをおすすめします。安心してフィリピンでの新生活をスタートさせてください。